事業承継・M&A 補助金(11次公募) - 投資銀行で15年の勤務経験がある行政書士が解説!
【2025年4月27日更新】
2025年4月18日に、「事業承継・M&A 補助金」(11次公募)の「専門家活用枠」公募要領が発表されました。 「事業承継・M&A 補助金」を活用すると、事業承継又はM&Aにおいて、買い手側(買い手支援類型)と売り手側(売り手支援類型)、 いずれの側でも、ファイナンシャルアドバイザー(FA)、DD・デュー・デリジェンスに要した費用など、 専門家を起用した際の費用が補助されます。 本稿では、投資銀行に15年の勤務経験があり、M&Aのプロセスも熟知している行政書士が、「事業承継・M&A 補助金」について詳しく解説いたします。 なお、第10次公募までは、PMIに要する費用(PMI推進枠)など、他の補助枠もありましたが、第11時公募では本稿で紹介するMA実行時の「専門家活用枠」のみが募集されています。

「事業承継・M&A 補助金」(11次公募)のスケジュール
「事業承継・M&A 補助金」(11次公募)のスケジュールは次の通りです。 補助事業の実施期間が12ヶ月で、原則この期間にクロージングさせる必要がある点が、この補助金の最も使いにくい点なのですが、ここは後述の通り一部緩和されています。
フェーズ | 内容 | 時期 | 補足 |
---|---|---|---|
情報公開 | 公募要領(正式版)の公表 | 2025年4月18日~ | 暫定版は3月31日公開 |
申請受付期間 | 補助金の電子申請受付 | 2025年5月9日(金) ~ 6月6日(金)17:00 | gBizID・jGrants必須 締切厳守 |
採択発表 | 採択結果通知 | 2025年7月上旬 (予定) | マイページに通知 |
交付申請 | 交付決定手続き | 採択後 数週間以内 | 交付決定後 契約開始可 |
事業実施期間 | M&A・DD の実行 | 2025年7月~ 約12ヶ月 | クロージング完了を目指す |
実績報告 | 証憑・報告書提出 | 事業完了後 速やかに | 不備があると審査遅延 |
補助金交付 | 精算・審査後の支払い | 実績審査完了後 | 後払い方式 |
※ gBizID プライムの取得には最大 3 週間ほどかかる場合があります。
※ 事業実施前の契約・支払いは補助対象外となるためご注意ください。
留意事項
・ 補助金の交付決定前に、専門家との間で委託契約(FA契約、アドバイザリー契約)を締結してはいけません。 交付決定の前に見積もりは必要ですが、契約は、交付決定後に締結する必要があります。なお、見積もりは原則相見積もりを必要としますが、FA契約の場合、着手金から成功報酬までを含めて費用の総額が下記のレーマン表(レーマン方式)に記載の金額以下である場合は、相見積もりが不要な場合があります。 詳しくは当事務所または、その他、「事業承継・M&A 補助金」を専門とする行政書士にお聞きください。

- 注 移動総資産:譲渡額に負債額を加えた額
- 注 上記レーマン表は中小企業庁が定めたものではなく、参照用としての一般的なものであり、 M&A市場の実態および政策の観点から更新される可能性があります。
・ 「事業承継・M&A 補助金」(11次公募)の「専門家活用枠」では、客観的資料に基づいたMAの検討と実行を担保するため、またPMIの推進の観点から、デュー・デリジェンス(DD)は必ず実施する必要があります。なお、DDに要した専門家費用(弁護士費用、会計士費用、不動産鑑定士費用、行政書士費用等)も、補助対象経費です。
補助率と補助上限額
下記が補助率(助成率)と補助額(助成額)です。 買い手支援類型と売り手支援類型で、同じ補助額と補助上限額ですが、補助率だけが少し異なります。買い手が常に2/3であるのに対して、売り手は補助率2/3が適用される条件が限定され、原則1/2です。 売り手よりも、買い手が事業を取得した後のその事業の成長をより支援したいとの政策意図が読み取れます。
また、MAはクロージングの時期が読めないことが多く、補助事業期間でクロージングできるかどうかはかなり不確実な訳ですが、本補助金ではその点が考慮されており、クロージング時期がすれたとしても補助対象となる点が特徴です。 (ただし、上限は300万円に削減(注3))
類型 | 補助率 | 補助下限額 | 補助上限額 | 上乗せ額 (DDに係る費用) | 上乗せ額 (廃業費) |
---|---|---|---|---|---|
買い手 支援類型 (Ⅰ型) | 補助対象経費の 2/3 以内 | 50 万円 | 600万円 以内 | +200万円 以内 | +150万円 以内 |
売り手 支援類型 (Ⅱ型) | 補助対象経費の 1/2 又は 2/3 以内 | 50 万円 | 600万円 以内 | +200万円 以内 | +150万円 以内 |
- 注1 申請時の補助額が補助下限額を下回る申請 (補助対象経費に 2/3 又は 1/2 を掛けた金額が 50 万円を下回る申請)は受け付けられず。
- 注2 売り手支援類型において、以下の要件①②のいずれかに該当する場合は 補助率を 2/3 以内、該当しない場合は補助率 1/2 以内。
- ① 物価高等の影響により、営業利益率が低下している者(詳細は公募要領参照)
- ② 直近決算期の営業利益または経常利益が赤字の者
- 注3 補助事業期間内に経営資源の引継ぎが実現しなかった場合 (期間内にクロージングしなかった場合)、補助上限額を 300 万円以内へ変更。
- 注4 デュー・ディリジェンスを実施する場合、 200 万円を補助上限額に加算。
- 注5 廃業費の補助上限額は 150 万円。ただし、廃業費に関しては関連する経営資源の引継ぎが補助事業期間内に実現しなかった場合は 補助対象外。
補助対象経費
主な補助対象経費は次の通りです。ただし前述の通り、クロージング出来ない場合は、着手金やリテーナーフィーを含めて補助対象外です。
- 着手金
- リテーナー費用
- マイルストーンフィー(基本合意締結時)
- 成功報酬(最終契約締結時、クロージング時等)
- デュー・デリジェンスの費用
- その他弁護士、司法書士、行政書士、社会保険労務士等のクロージングに向けた費用
- セカンドオピニオンに係る費用
申請資格要件
主な申請の資格要件は次の通りです。 当事者が国内の企業に限定されることと、M&A 支援機関登録のあるFAを利用することが条件になっている点も注意が必要です。
- 中小企業であること
- 日本国内で事業を営んでいること
- 暴力団など反社会的勢力と無関係であること、その他法令遵守体制に問題がないこと
- 経産省・中小機構から、補助金の停止措置を受けていない
- M&A 支援機関登録のあるFAまたは仲介業者を利用すること
- FA/仲介代表者と申請者代表者が同一人物でない
実質的な要件 - 審査項目
審査項目は、買い手支援類型と売り手支援類型で異なりますが、双方で地域経済への影響が審査される点、また、買い手側では成長が審査される点がポイントです。当然シナジーも審査の対象です。 これら審査項目の充足性は、申請書類である事業計画の中で訴求します。
① 買い手支援類型(Ⅰ型)
- 経営資源引継ぎの計画が補助事業期間内に適切に取り組まれるものであること
- 財務内容が健全であること
- 買収の目的・必要性
- 買収による効果・地域経済への影響
- 買収実現による成長の見込み(自社の事業環境、外部環境を踏まえること。シナジーも必須)
② 売り手支援類型(Ⅱ型)
- 経営資源引継ぎの計画が補助事業期間内に適切に取り組まれるものであること
- 譲渡の目的・必要性
- 譲渡による効果・地域経済への影響
まとめ
本補助金(助成金)は、通常の補助金と異なり、不確実性の高いM&Aという局面で利用する補助金で、M&Aの不確実性とプロセスを踏まえた補助金のスケジュールの設計、事業計画の作成が極めて重要です。 筆者は、銀行勤務経験(法人営業)と投資銀行への勤務経験を有する行政書士として、中小企業の皆様、それから FAの皆様からの「事業承継・M&A 補助金」の相談と申請支援に応じています。 加えて当事務所では、中小企業の皆様により上質なサービスを提供すべく 当事務所代表と同様の知識と経験を有する行政書士とともに、単独受任時と変わらない報酬での共同受任にも応じています。 LINE、問い合わせフォーム、または、お電話にてお気軽にお問い合わせ頂ければ幸いです。
提携先:行政書士藤原七海事務所
参考法令・資料
- 中小企業生産性革命推進事業「事業承継・M&A 補助金」(第11次)公募要領
- 事業承継・M&A補助金交付規程
- 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律
本稿の筆者

行政書士
基本情報技術者
J.S.A. ワインエキスパート
古森洋平 Yohei Komori